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加​工​さ​せ​し​、​ユ​リ​ー​=​ロ​ッ​セ

by 故やす子

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1.
暑い日々が続く。 汗をかいたペットボトルをあおり、空(から)になったそれを君はぞんざいに振った。 「これでボトルシップ作れるかな」 君はいつでも突飛だ。予想外で、規格外だ。 「どうだろう」 僕はというと凡庸だ。予想内で、規格内だ。やにわに落とされた言葉にも気の利いたことを返してやれない。 「君が作って」 そう言って渡された空(から)のペットボトル。強い陽射しを透かして輝いている。 途方に暮れて見上げた空にはそびえ立つように浮かぶ入道雲。油絵みたいに鮮やかで、まるで帆を張った船だ。 僕は空のペットボトルを空に掲げる。目の覚めるような青と帆船を閉じ込めれば、即席ボトルシップの出来上がりだ。 頓知に逃げたね、と君は笑う。 手厳しいコメントに、僕も笑った。 強い風に流されて、船は大海を進んでいく。そのすぐ傍を飛行機が横切っていった。 今日より先も、嫌になるぐらい暑い日々は続いていく。 それでも、こうして隣で君が笑っていてくれるなら、と僕はいつだって思っているんだ。 君は知らないだろうけど。
2.
甘いだけの砂糖菓子 毒にも薬にもならない、どうせ 歪な棘を いくつも出せば 都合よく人は 星になぞらう 言葉遊びで 気持ちよくなり 明けない夜は ないなどと言う すぐにでも太陽を 滅ぼすしかないのかな こんな時だけだよ 有言実行できるのは、なんて
3.
ひっくり返した衣装ケースから出てきた小さな手袋は、赤色 ある寒い日、精一杯こちらへと伸ばされた紅葉を両の掌で包み込んだ 趣味のクロスワードはいつも最後まで解ききれない そうして雑誌は溜まっていき、薄汚れた絵本と仲良く本棚で並んでいる 雑誌はそのうち捨てるだろうけど、きっと、絵本は一生捨てられない カレーのルーにはこだわりがある 蜂蜜入りの少し甘いもの 実はあなたに言ってなかったことがある 本当は、私カレーが嫌いなの それでも頻繁に作っていたのは、お腹を丸くしておかわりする姿が見たかったから あなたの声に合わせて一緒に歌うと、つられて私も下手になった 元の音階は思い出せないけど、あなたの歌は昨日聞いたみたいにいつでも思い出せる 出口が見えない夜の中でも、あなたの調子っぱずれな歌声が私を朝へと導いた 産毛みたいな前髪、丸くて小さな爪、高い体温、真っ直ぐなまつ毛、笑うと右側にだけできるえくぼ どんな些細なことでも覚えている私を、あなたはきっと笑うでしょう そうよ、あなたは笑っててね 私が泣いても、笑っててね
4.
プライマリー、意味は知らないけど 僕のことでないことはわかる 二人だと寂しいからと誘われた 結局、2+1 喋ることもなく 窓の外 語呂合わせ 走る車のナンバーで セカンダリーなポジション 誰かにとっての間に合わせ 孤独ではない日々 苦でもない日々 それでもいつも 来る(きたる)朝を恨んだ セカンダリーなポジション 豪華なステーキの付け合わせ だけど、この世に一人はいるのかもな ブロッコリーが一番好きって人間が
5.
帰りたい。そんな文言が脳裏をよぎると、もう足は止まらなくなった。 何処までも続く青へと伸びる道を駆け抜け、僕は空に沈むような心地で身を投げた。 力強く受け止めてくれたのは流体だ。肌を撫でていくのは空気の玉で、聞こえてくるのは心臓の音。射し込む光すらも追い越して、僕は急くように足をばたつかせた。 早く、早く。ちっぽけな僕を大きな腕で抱いてほしい。 途中、魚の群れを分断するように通り過ぎていく。 ふと、目があった。 群れを外れた鰭が不格好な一匹がこちらを見つめている。 その見覚えのある姿が僕を苛み、苦しいものを吐き出したくて、僕は、僕を、目尻から宙へと返した。 「坊や、おかえりなさい」 聞こえてくるのは、心臓の音。あとは何も。だから、聞きたいように聞いた。 「坊や、おかえりなさい」 ただいま。 「世界は美しかった?」 時々。 「何が聞こえる?」 心臓の音。 「何が見える?」 何も見えない。 「何処に帰るの?」 ここじゃない何処かへ。 心臓の音が一際大きく聞こえる。またあの声が僕を呼ぶ。坊や、坊や。僕によく似たその声が、何度も何度も僕を呼ぶ。 「何が見える?」 何も見えない。 「何が聞こえる?」 何も聞こえない。 「おかえりなさい」 ただいま。 「そして、おやすみなさい」 青い御霊に抱かれて眠りにつこうとするけれど、あたりはすっかり真っ暗で僕は心底がっかりした。 気づけば、耳が痛いほどの静けさが僕をじっと見つめている。 最後の最後まで見つめて、きっとすぐに興味をなくしたようにそっぽを向くんだろう。 そんなことに気づいても、今更なのだけれど。 僕はただ、愛されたかっただけなのだけれど。
6.
夢日記 02:26
あの日の君が救われる日をずっと待っている たおやかに振られたそれを握りたくて、気づけば走り出していた 瞭然と気付けたのは、君の手に温度がなかったから 白く、ひんやりと、しっとりと、僕に触れる熱 今は失われた熱 夢の中で僕ら、ずっと笑っていた 白く、つやりと、光る君の歯 齧った骨によく似ていた 罫線の上をペンが走る 右肩上がりだね、と君が笑った文字は、いつからか右肩下がり 君のことはなんだって覚えていたい いつか忘れちゃうから覚えていたい 罫線の上でペンが踊る 「二度と現れないで」 滲む文字で締めくくった 夜と共に消えゆく泡沫、何度も狂う僕、花に囲まれた君 夢の中で僕ら、ずっと笑っていた 今では笑えなくなった僕が、ずっと笑っていた あの日の僕が救われる日をずっと待っている 叶うはずのない夢だと告げる夢 右手には白い花を、君には本当のさよならを 僕の前には暗い道を、それでも進むべき道を 照らす灯りを探していたら、いつしか大人になっていた
7.
憧れたサファイア 通学路の露草 キャンプの夜の鬼火 父が好んだ煙草 あの日なくしたビー玉 迷子の子猫の瞳 晴れた日の水たまり お気に入りだった長靴 風で飛んでいった帽子 休日の母の爪 庭でとれた実 闇の中に浮かぶブラウン管 一番最初になくなった絵の具 あの子に似合うワンピース 卒業文集、好きな色の欄 異国の洞窟は奇跡のように光る 花嫁からねだられた 渡したのは宝箱にしまった鳥の羽 アネモネだったかモルヒネだったか あの花の名前は何だったのか 空も海も追いつけないほどの色は 幸せだったねと、僕の首を締める それでも、皮の下で脈打つ赤は サイレンのようにけたたましく 足を交互に動かす消化試合 輝かしくなくとも、その先へ 地獄とも呼べる、その先へ いつかまた会えなくとも それでもいいかと笑えるようになりたくて 空も海も追いつけないほどの色を 幸せだったねと、笑えるようになりたくて
8.
気力と運と容姿と頭脳と 胎内に全て忘れてきた ハッピーバースデー、何がハッピーだ 寝てる間(ま)に隕石でも落ちればいい 迎えた朝に 絶望しては 夜、また世界に 期待し始めてる 「すべてひっくるめて 幸せなんだよ」 そうは思えなくて それでも、卵が半熟に 焼けると少し嬉しくなって 雨が降れば全てが 嫌になって 車で聞く身にならないラジオ 週末の半チャーラーメン 俺を彩る全てが 今になって 渡せず埃をかぶった手紙 消えない右肘の切り傷 胸の痛み全てが 血汐となって 西口から出た時の夕日 クソみたいなあいつの横顔 俺を象る全てが 巡り巡って
9.
パフォーマンスの低下にはラムネをODするといいですよ ウイスキーはロックが好き アイスピックを手に取るドクター 手軽気軽にドライブスルー、神経回路は迷子になった 紙上で踊る「脳細胞と宇宙は似ている」 出来損ないの僕のニューロン、いつも何かが欠けていた 少しつついたくらいではビッグバンは起きない あの頃は良かったと振り返るスーパーノヴァ もう二度と届かない光、ゲロ吐いたら全部汚れた 毎日死んでいく3億の命は悪 どうせなら目玉もくり抜いておくれ ローン60回払い、今ならパイプカットもお付けします 練炭と縄もついたアンハッピーセット おもちゃはどれを選びますか
10.
生きているものが死にたいと願い 死にかけているものが生きたいと願う 屠られる鳥は自分の運命を恨み 人は空を飛びたがった 何ものにもなれない世界で、世界一大きな猫は小さくなりたかった ぬかるみを歩けばクレーター 枕にできるのはピラミッド 尻尾で起こる交通渋滞 溜息で散っていく雲 何処へ行っても邪魔になるのだと言えば 窓際の男は気の毒だと笑った バケツをひっくり返したように涙を落とせば ヒールの女は梅雨でもないのに迷惑だと怒った 何ものにもなれない世界で、世界一大きな猫は小さくなりたかった あの子が伸ばした手のひらに眉間を擦り付けたかった 何ものにもなれない世界で、世界一大きな猫は小さくなりたかった 死んだ後は星になって、夜空で小さく輝きたかった それはまるで、部屋の壁時計のように 路肩に生えるスギナのように 赤子に寄り添う母親のように

about

仮名さんとの合作です
頭の悪い曲と頭の悪くない曲を半々くらいの割合でちりばめました
(歌詞は頭悪くないです!頭良いです!!)
是非聴いてください~

credits

released June 13, 2022

作詞とアートワーク 仮名
作曲と編曲 故やす子

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故やす子 Japan

俗流マスコアボカロP
Mathcore Vocaloid Producer

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